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晴れのち曇り、一時雨

久しぶりにプリチャに映画を見に行きました。
今回見たのは、「ザ・セル」のターセム・シン監督が手がけた「落下の王国 The fall」。
The Fall _d0031955_01358.jpg
舞台は1920年代のLA、とある病院。映画のスタントマンをしていたロイは、撮影中の事故で大怪我を負って入院中。そのうえガールフレンドを主役の俳優にとられてしまって、絶望の淵にいた。そんな矢先、同じ病院に入院中の5歳の少女、アレクサンドリアと出会う。ロイは彼女を使って薬を入手し、自ら命を絶とうと思い立ち、彼女の気を引くために、即席の物語を作って聞かせるのだが…。

映画ではこの、ロイが語って聞かせる物語=空想のストーリーの内容が、彼の深層心理のような形で表れていて、現実のストーリーと空想のストーリーが同時進行する。空想のストーリーの登場人物は、病院の先生だったり、看護婦さんだったり、アレクサンドリアの実家であるオレンジ農園の使用人だったり、はたまたロイ自身だったり。もちろん全員、姿を変えて出てくる。

とにかく、その映像美にため息。
さすが4年の年月をかけて、世界各地で撮影しただけのことはあります。
見ていて、ここは一体どこなんだろうー?って思うような場所がいっぱいありました。
世界には本当にたくさん、息を呑むほど美しい場所があるのに、
大多数の人は、一生のうち、そのほんの一部を見るだけにとどまってしまう。
まあ、一部でも見られたらラッキーなのかもしれないけど。

それから、この映画がデビュー作だという
アレクサンドリア役のカティンカ・アンタルーちゃんが素晴らしい。
彼女の仕草や表情を見ているだけで、可愛くて泣けてくるぐらい。
本当にぴったりのハマリ役。

色鮮やかで奇抜な衣装を手がけたのは、
北京オリンピック開会式の衣装デザインも担当した石岡瑛子さん。
空想の世界の非現実感が見事に映し出された、印象的なコスチュームでした。

そして個人的には、誰かが紡ぎだした物語を、別の誰かが夢中になって聞いている、
そしていつしかお互いの心に作用するという設定が、もうたまらなく好きだ。
ところで、物語や音楽を共有するとき、その色や質感など、
各自の脳内で展開されるビジュアルには、どのぐらい差があるんだろう? 
人の想像力って、ほんとに無限で面白い。
同じ世界に生きていても、全く違うものを見ていることも多いんだろうなあ。
まず視点の違いがあり、そして常識や許容範囲の違い、
さらに想像や妄想が加わると思うと……。
果てしなく世界は広がってしまいますね。

ところで、ロイが物語の登場人物を紹介するくだりで、
イギリス人の博物学者、ダーウィンが出てきたとき、シネマ内で笑いが起こった。
私も思わず笑ってしまった。だって典型的なイギリス人なんだもん!
でもこれ、こっちに住んでなかったら、全然わかんなかっただろうし、
面白くもなんともなかっただろうなあと思う。
海外の映画で、いわゆる「典型的な日本人」がジョーク交じりに描かれていたりすると、
ちょっと心外な感じを抱きつつも苦笑してしまうものですが、まさにそんな感じでした。
ふだんはいたってマジメに、真剣にやってることでも、客観的に見るとちょっと滑稽。
どの国にもそういうのってあるよね。自分がその渦中にいると全然笑えないんだけど、
引いて見るとかなり可笑しい。わかってるんだけど変えられない。
ああ愛しきかな、国民性。

●today's disc:LEMON JELLY/LOST HORIZONS
各地を気球に乗って旅しているような、知らない世界に連れて行ってくれるような、
無限の広がりと、人の温もりが同時に感じられるようなサウンド。
移動中のBGMにも良いです。

by satoritti | 2008-12-07 13:13 | film

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